「工場内が暑すぎて、従業員から『もう辞めたい』と言われている」
「夏場になると熱中症で倒れる社員が出る。何か対策をしないと危ない」
このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
夏場は屋根や壁が太陽光を吸収し、室温が40℃以上に達することもあります。暑さによる作業効率の低下や、熱中症のリスクが高まる中、事業者は適切な対策が求められています。
しかし、冷房設備を増設するとコストがかかり、扇風機やスポットクーラーだけでは根本的な解決にはなりません。そこで注目されているのが「遮熱シート」です。
本記事では、遮熱シートの効果や仕組み、種類と選び方、施工方法、導入メリットなどを詳しく解説します。
この記事を読むことで、工場・倉庫の暑さ対策を成功させるために、最適な遮熱シートの選び方が分かります。さらに、施工時の注意点や導入事例も紹介するので、具体的なイメージを持てるようになります。
「熱中症のリスクを減らし、安全な作業環境を確保したい」と考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
遮熱シートとは?効果と仕組み
遮熱シートは、室内の温度上昇を抑えるシート状の建材です。
建物の屋根や壁に取り付けることで、太陽からの熱を反射・遮断します。工場・倉庫・体育館などの大規模施設で使用され、空調負荷を軽減し、省エネ効果を発揮します。
遮熱シートの効果|表面温度を10〜15°C下げる
遮熱シートを施工すると、以下のような効果が得られます。
- 屋根・壁の表面温度を低減
- 室温の上昇を抑える
- 冷房コストを削減
- 作業環境の改善
屋根や壁は夏場の直射日光で70℃以上にも達します。特にスレートや金属屋根は熱を吸収しやすく、室温の上昇をまねく要因です。遮熱シートを施工すると、表面温度を10~15℃低減でき、建物内部への熱の侵入を抑えられます。
屋根からの熱がこもる工場や倉庫では、室温が5~8℃低下するため、空調設備の負担も軽減されます。エアコンの稼働時間が短くなり、結果として15~20%の電気代の削減が可能です。
高温環境にさらされる作業員にとっても、遮熱シートの導入は大きなメリットです。室温が40℃を超える現場では、熱中症のリスクが高まり非常に危険です。遮熱シートを導入して、室温の上昇を抑えることで、働きやすい環境を維持し、安全性と生産性の向上にも貢献できます。
遮熱シートの仕組み|「反射」「遮断」「放熱」
遮熱シートは「反射」「遮断」「放熱」の3つの原理で熱をコントロールします。
原理 |
仕組み |
反射(熱の侵入防止) |
アルミ製のフィルムが太陽光を80~90%反射 → 屋根や壁の温度上昇を防ぐ |
遮断(伝導熱の低減) |
シート内部の空気層が熱の伝導を抑える → 室内への熱流入を防ぐ |
放熱(蓄熱防止) |
蓄熱せずに熱を効率よく外部へ逃がす → 夜間の温度低下を助ける |
上記の3つの機能により「屋根の温度上昇を防ぐ → 室内に熱を入れない → こもった熱を逃がす」という流れで、冷房効率を最大化します。
遮熱シートと断熱材・遮熱塗料との違い
建物の温度管理には、遮熱シート以外にも断熱材や遮熱塗料が使われます。それぞれの特徴を理解し、適切な材料を選ぶことが重要です。
種類 |
仕組み |
遮熱シート |
太陽光を反射し、熱の侵入を防ぐ |
断熱材 |
繊維や発泡素材が熱の伝導を遅らせる |
遮熱塗料 |
反射性能のある塗料で表面温度を下げる |
遮熱シートが適している用途は、夏場の温度上昇対策・冷房コスト削減を重視する工場・倉庫・体育館などです。
断熱材は冬場の保温や温度の安定性を求める住宅・オフィスビルに適しています。しかし、夏場の冷房負荷を軽減する効果は限定的です。
遮熱塗料は手軽に屋根や外壁の温度上昇を抑えられますが、経年劣化しやすく、再塗装が必要となります。
遮熱シートは、夏の暑さ対策に特化し、冷房負荷を抑えるのに最適な建材です。
遮熱シートの種類と選び方
遮熱シートの原材料はアルミニウムです。アルミは高い反射率を持ち、太陽光を反射することで、建物の温度上昇を抑える役割があります。
遮熱シートは、屋根や壁の内側に貼るタイプと外側に貼るタイプの2種類に分かれます。それぞれの特徴を理解し、施工のしやすさや用途に応じた適切なタイプを選ぶことが重要です。
種類 |
特徴 |
内側に貼るタイプ |
太陽光による熱の侵入を防ぐ |
外側に貼るタイプ |
直射日光を反射 建物自体の温度上昇を防ぐ |
内側に貼るタイプの遮熱シート
建物の屋根や壁の内側に設置するタイプの遮熱シートは、太陽光による熱の侵入を防ぐことが目的です。
エアコンの負荷軽減にも役立ち、コストを抑えながら効果的な暑さ対策を実現できます。ただし、既存の屋根の構造によっては施工が難しくなる場合があり、場合によっては大がかりな工事が必要になる可能性もあります。
外側に貼るタイプの遮熱シート
外側に貼るタイプは、屋根や外壁の表面に直接施工することで、太陽光を反射し、建物自体の温度上昇を抑えます。
施工性の面では、外側施工の方が工期が短く、比較的低コストで導入しやすい場合があります。ただし、シートが直接外気にさらされるため、紫外線や風雨による劣化のリスクがある点に注意が必要です。
タイプ別の特徴を比較
それぞれの遮熱シートにはメリットとデメリットがあり、用途や建物の構造に応じた選択が重要です。以下の比較表を参考に、最適なタイプを選びましょう。
コスト |
施工性 |
耐久性 |
遮光性 |
|
外側に貼るタイプ |
◎ |
◎ |
△ |
◎ |
内側に貼るタイプ |
△ |
△ |
◎ |
〇 |
遮熱シートの施工方法
工場の屋根に遮熱シートを施工する流れは、屋根の清掃 → シートの設置 → 継ぎ目処理 → 端部処理の4つの工程に分かれます。
工程 |
作業内容 |
屋根の清掃 |
施工前にホコリや汚れ、サビを除去 シートが密着しやすい状態にする |
遮熱シートの設置 |
屋根の形状に合わせてシートを広げる ズレがないように均等に貼り付ける |
シートの継ぎ目処理 |
シート同士を重ね貼りし、固定する 隙間から熱が侵入しないための処理 |
端部の処理 |
端をしっかりと固定する 風や雨の影響でシートが剥がれないための処理 |
施工時には、シートのズレや隙間を防ぐことが重要です。施工後にシートがしっかり固定されているか確認し、必要に応じて補強を行うことで、長期間にわたる耐久性を確保できます。
遮熱シートの導入の流れ
遮熱シートを導入する際は、事前調査から施工の流れを把握することが重要です。適切な手順で進めることで、効果的な遮熱対策が実現できます。
既存の建物に導入する場合、工場の稼働を止められないケースも多いため、施工方法を慎重に選ぶ必要があります。外側施工は工場の運営を妨げずに遮熱対策ができるため、多くの現場で採用されています。
工程 |
内容 |
事前調査 |
建物の屋根や壁の状態を確認 適切なシートの種類や施工方法を決定 |
施工計画 |
工場の稼働に支障がないか 作業スケジュールを立てる 安全対策や必要な資材を準備 |
遮熱シートの設置 |
屋根や壁の施工面を清掃 シートをズレなく均等に貼り付け |
点検・調整 |
シートの固定状態や隙間をチェック 必要に応じて補修 |
外側に設置する遮熱シートの耐用年数は約10年です。そのため、定期的なメンテナンスが必要となります。屋外に露出しない場合は長期間利用できますが、施工のハードルが高いところがデメリットです。
適切な施工と維持管理を行うことで、工場の快適性を向上させ、冷房コスト削減につなげることが可能です。
遮熱シートの導入メリット
遮熱シートを導入することで、工場や倉庫の暑さ対策が強化され、冷房コストの削減や作業環境の改善が期待できます。特に、屋根や壁に施工することで、太陽光の輻射熱を反射し、室内温度の上昇を抑える効果があります。
室温の上昇を抑える|5〜8℃下げる
遮熱シートは太陽光の熱を反射し、屋根や壁の表面温度を低減します。室内温度が5〜8℃下がるケースもあります。
冷房コストの削減|15〜20%カット
室内温度が下がることにより、エアコンの負荷を軽減します。遮熱シートを導入すると、真夏の電気代を15〜20%削減可能です。
電気代の削減だけにとどまらず、冷暖房機器の寿命の延長にも期待できます。遮熱シートの導入は、長期的なコスト削減につながります。
作業環境の改善|熱中症リスクの低減
室温が適正に保たれ、従業員の負担が軽減されます。熱中症のリスクを低減し、安全性を向上します。
設備の劣化を防ぐ|結露の防止
建物の屋根や壁が高温になると、温度変化による膨張・収縮が繰り返され、劣化が進みやすくなります。遮熱シートを導入すると、温度変化が抑えられるため、屋根や建物の耐久性が向上します。
また、結露の発生を抑える効果もあり、湿気による腐食やカビの発生を防ぐことができます。
施工のしやすさ|後付け施工
遮熱シートは、既存の建物にも後付けで施工可能です。特に、外側施工は工場の稼働を止めることなく施工が進められるため、業務に影響を与えません。また、短期間での施工が可能なため、工事の負担も少なく、スムーズに導入できるのがメリットです。
遮熱シートの導入事例
屋外の屋根に設置する遮熱シートの施工事例です。
施工前 |
施工後 |
![]() |
![]() |
屋内の屋根の天井に設置する遮熱シートの施工事例です。
施工前 |
施工後 |
![]() |
![]() |
実際に得られた効果
下記の表は遮熱シートを導入した効果を検証した結果です。
導入前 |
導入後 |
|
室内温度 |
35°C |
29°C |
消費電力 |
100% |
30%カット |
除湿効果 |
結露の発生 |
結露を防止 |
屋根温度 |
41°C |
23°C |
遮熱シートを導入すると、室内温度が35°Cから29°Cまで下がった実績があります。室内温度の低下に伴い、冷房効率が向上し消費電力を30%削減できます。
また、高温の物に低温の物が接触すると、接触部の空気に含まれる湿度が過飽和状態となり結露が発生しやすくなります。遮熱シートは輻射熱(ふくしゃねつ)を与えても高温になりにくいため、そもそも結露しにくい性能があります。遮熱シートは建物はもちろん食品関係等多くの設備に「結露防止材」として使用されています。
遮熱シート導入後の屋根の温度が18°Cまで下がった実績があります。導入する前の屋根の温度は41℃でしたが、遮熱シートを設置すると23℃まで下がりました。
遮熱シートは、真夏日の太陽光による日差しを大幅にカットするため、快適な室内環境を維持できます。
よくある質問(FAQ)
24時間稼働していて生産ラインを止める事が出来ません。 それでも施工は可能ですか?
はい、屋根の上での作業ならラインの稼働を続けたまま施工可能です。
工事期間はどのくらいかかりますか?
500㎡の屋根で3〜4日の工事期間が目安です。
遮熱シートと断熱材の違いは何ですか?
遮熱シートは、太陽光を反射して熱の侵入を防ぐことが目的です。断熱材は内部の熱を逃がしにくくする役割を持ちます。そのため、夏の暑さ対策には遮熱シート、冬の保温には断熱材が適しています。
遮熱シートの施工には専門業者が必要ですか?
施工の精度によって効果が変わるため、業者に依頼するのが安心です。
遮熱シートは冬場にも効果がありますか?
遮熱シートは主に夏の暑さ対策に使われますが、冬場は室内の暖房器具から出る熱を反射して保温効果を高める効果があります。
遮熱シートの耐用年数はどのくらいですか?
一般的には約10年の耐久性があります。